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「私が哀れだった? 実の兄への復讐の手伝いをするの? 私をからかって楽しい? 私はね、私は──」
涙が、頬を流れていく。上手く言葉が出てこないし、何もかもボロボロだ。
本当は分かってる。晴太くんは私をからかうことなんてしない。でも、期待して突き落とされたら、私の心は今度こそ砕けてしまう。こんな風に強がりの鎧を纏うしか無かった。
はじめは、晴太くんといたら雪斗の奥さんに私の存在を知らしめるチャンスがあるかも、なんて黒いことを考えた。
だけど、晴太くんの真っ直ぐさで少しずつ浄化された私は、もう随分前から晴太くんを好きになってしまっていたんだ。
澄んだ瞳で“さちこさん”と慕ってくれる彼に、嘘だらけの汚い私がバレて嫌われるのが怖かった。
「からかってなんていません」
「嘘!」
いい歳して泣きじゃくる私を、晴太くんはそっと抱きしめた。
「“あの時”僕はまだ学生で、無力でした。でも今は違います。あなたを、守れます。あなたの辛さも憎しみも、全部受け止めます──初めて会った時から、好きでした。僕と結婚を前提に付き合ってください」
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