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4歳……。いつの写真なのか分からないけれど、あの悪夢の日はもう、相手は妊娠していたのかもしれない。
“私、結婚したら子供はすぐに欲しいな”
“ははっ、気が早すぎだろ”
雪斗は、今日が何の日かなんて覚えてさえいなかった。私に謝ったのも、私の為じゃなく“娘のため”だった。
雪斗のための涙はとっくに枯れ果てたと思っていたのにとめどなく溢れてくるので、柱の陰とはいえ顔を伏せていた。けれど、ふいに足音が近づいてきて、大きな革靴が斜め右で止まった。
「どうされました?」
声をかけられたことに驚いて思わず顔を上げると、スーツを着た背の高いその男性は、整った顔の目を、一瞬見開いた。
夜更けにこんなところでしゃがみこんでボロボロに泣いてる女を見れば、当然の反応だ。
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