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「体調が優れませんか?」
「そういうわけではないので、大丈夫です」
ほっといてほしいので素っ気なく答え、顔を伏せた。でも、その男性は動かなかった。
「では……辛いことでもありましたか?」
落ち着いたその声に、不思議と無視できなかった。
「まあ、そんな感じです」
「実は僕も会社でこってり絞られてきたところなんです。良かったら少し飲みにでも行きませんか?」
「え? ……それは、ちょっと」
この男、初対面のこんな怪しい女に一体何を言い出すんだろうと考えていると、男性が続けた。
「この辺はナンパも多いらしいので、こんなところで女性一人じゃ危ないですよ」
「へ?」
ナンパ? 三十路の女に?
それに、真面目そうなこの人からそんな言葉が出たことがなんだか繋がらず、口をぽかんと開けて男性を見た。すると、男性はみるみる顔を赤くした。
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