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それから私が目を覚ましたのは数分後だったのだと思う。
父の怒鳴り声や母の震える声が耳に届き、ああ夢じゃないんだと思いながらゆっくりと目を開けると、気品溢れる蔦模様の真っ白の天井が見えた。私はフィッティングルームのシックな布張りの大きなソファに寝かされていた。横には、私が持つはずだった白百合のブーケがスタンドに飾られている。
身体を起こすと、目の前の光景はまるでドラマのようだった。
床に顔が着くくらい土下座する彼の両親。
見たこともないほど怒りを露わにする父。
その横で、悲痛な表情で立ちすくむ母。
御祝儀を受け取る訳にはいかないだとか、お料理は用意されてるから食べてもらった方がいいだとか、引き出物や支払いはどうするだとか。
スタッフが間に入り、「別室でお話しましょう」と取り乱した4人を連れ出した。
両親とスタッフはゲストの対応や、莫大なお金のかかった式の対応でパニック状態、私の心にまで気持ちが回らなかったのだと思う。
涙も出ずに呆然としていた私は、徐々に彼に捨てられてしまったのだということを実感して、ただ絶望した。
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