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真野さんに手を引かれ、教えてもらった通りドレスの裾をそっと蹴りながら歩く。あの時は歩くことのなかった通路を通り教会横の控え室へ向かう。
「本当にお綺麗です」
「7年前よりも?」
私の意地悪な質問に、一瞬目を丸くした真野さんは微笑んだ。
「はい、もちろん。では、こちらのお部屋ですよ」
私が怯む間もなく、真野さんによってその白い扉は開かれた。
十字枠の窓から優しく差し込む陽が、後光のように白のタキシードに身を包む彼を照らしている。
「優里さん」
大きなソファや豪華な化粧台のある教会の控え室で私を真っ直ぐに見つめる新郎、平野晴太が、奥二重の優しい目を輝かせた。あの悪夢がトラウマで、心の端っこには不安があったのだ。いつもと変わらない笑顔の彼がいてくれたことに心からほっとする。
晴太くんはこちらへ来て、「歩きにくいでしょう」とまるで王子様のように私に手を差し出した。
「綺麗だ。とても」
“私は雪斗に復讐したくてあなたと一緒にいただけよ”
──晴太くんと再会したのは、あの悪夢から5年後の春だった。
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