2度目の花嫁

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*** その日私は、30歳の誕生日を迎えていた。 平日で仕事。しかも残業だったので、22時を回ろうとしている腕時計を見てため息が出た。人通りの少ない歩道をひとりで歩き、駅へ向かう。 30にもなれば誕生日だからどうというこだわりはそれほどない。でも、それは例えば彼氏でも親友でも、祝いたいと言ってくれる人がいれば、の話であって。 友人とは、あの悪夢以来すっかり距離ができてしまった。全てに気力をなくした私が、心配してくれた友人を突き放したからだ。 心の底では面白がってるんでしょう? なんて、荒んだ心はどこまでもネガティブだった。そんなはず、なかったのに。 実家暮らしなので、今でも彼氏のひとりもできない私のことを心配する両親が、きっとケーキを用意して待っている。嬉しいことのはずなのに、申し訳なくて、情けなくなる。 その時、1日静かだったスマートフォンが着信を知らせた。 バックから取り出して画面を見ると、名前ではなく番号が表示されている。不思議に思ったけれど、見覚えのある番号に心臓が跳ねた。 それは間違いなく、雪斗の番号だった。
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