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あの日から雪斗とは会っていないし、私はSNSもやっていないので、彼がどうしているのか全く知らなかったし、知るのが怖かった。
5年も経っているのに、何かを期待してしまった私は、どこまでも愚かだ。
「──はい」
『優里』
懐かしいその声を聴いて、思わず涙が溢れていた。捨てられた怒りよりも、消しきれなかった愛しさが溢れてきてしまった。
駅構内の柱の陰に身を隠し、耳を澄ませた。
『俺、ずっと謝りたかった。でもなかなか勇気が出せなくて』
“やっぱりお前じゃなきゃだめなんだ”
心のどこかで、そんな有り得ない言葉を期待していたのだと思う。
けれど、そんな私の心境なんて知りもしない彼は、また私を地獄に突き落とす。
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