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ゆっくりと瞳を開けると、純白のウェディングドレスに身を包んだ私が、神妙な顔をして全身鏡に映されていた。
花嫁らしいとは言えないショートボブのブラウンの髪はゆるいウェーブが作られ、頬と唇には幸せな色が乗せられている。
「とても、お似合いです」
衣装担当の真野さんが、鏡の中の私と目を合わせて、目尻に人柄の良さを表すシワを作って微笑んだ。
あの時よりも歳を重ねた私は、迷わずAラインのシンプルなドレスを選んだ。花の刺繍が散りばめられていて、品のある可愛さが気に入った。
今の私には、幼い頃から憧れていたプリンセスラインでは幼くなってしまう気がしたから。でも諦めて良かった、やっぱりこれにして良かった。
少しずつ、強ばっていた頬が緩む。
「新郎様はもう、準備が整っていらっしゃいましたよ。お呼びしますか?」
でもその言葉で、私の胸はドクンと低く唸った。
「……いえ、いいです。私が教会へ向かいます」
私の心境を察してくれた真野さんは、「では、一緒に行きましょう」と言って、また微笑んだ。
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