すべてが白になってました!

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「……え? いや、待って。この絵馬って……え、どういうこと?」  その絵馬に僕は見憶えがあった……左下に書いた名前部分にはモザイクがかけられているが、その字体は間違いない。明らかに僕が二年参りの時に書いて、神社に吊るしてきたあの絵馬である。 「御覧いただくとおわかりのように、ここには〝世界が一面白く(・・・・)なりますように〟とはっきり書かれています」 「なに言って、僕の書いたのは一面白くじゃなく、世界が面白くと……」  事実と異なるその言葉にツッコミを入れつつ、画面に映る絵馬の文字を僕は凝視する。 「……え? まさか、そんな……え、そういうことなの?」  だが、よくよくそれを眺めていると、僕はあることに気づく……僕は確かに「世界が面白くなりますように」と書いたのであるが、「が」と「面」の文字の間にちょうど木目の模様が「一」の字の如く横一本入っており、見ようによっては「世界が()面白くなりますように」とも読めるのである! 「ちょ、ちょっと待って! そ、それじゃあ、昨日までのあの現象は、僕の願いを神様が勘違いしてかなえてくれてたってこと!?」  もう、その原因が超自然的な神様の力によるものだということも色褪せるほど、トンデモにもほどがあるふざけたその真相に、僕は焦りを覚えるとともに驚愕の言葉を思わず口にする。 「今回の一連の騒動を受け、日本政府は臨時国会を招集して〝漂白()〟という新たな犯罪法案を満場一致で採決しました。現在、警察はこの絵馬を書いた人物を漂白罪の容疑で全国指名手配し、その特定を全力で進めています」  テレビの前で呆然と立ち竦む僕を他所に、女性キャスターはまるで他人事のような口調でそんな情報も付け加えてくれる。  またしてもふざけているとしか思えないその話に、今度は外の世界ではなく、僕の頭の中が真っ白になった………。 (すべてが白になってました! 了)
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