お互い化け物

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 冬だというのに春のような麗らかな陽気の中、H博士は束の間の休息を味わうべく桟橋で海釣りをしていた。  筋雲がゆったりと棚引く青い空を5羽のアカエカイツブリが仲良く並んで飛翔し、ざぶざぶと音を立てながら波光が煌めく青い海にスズガモの群れに混じってコオリガモが一羽のんびりと浮かんでいたりする、この空間と時間の中にいる限りでは、平和そのものだった。  そうしてH博士が長閑な気分でいると、長さ3メートルほどの円錐の形をした謎の物体が波に乗ってどんぶらこどんぶらこと彼の方へ流れて来た。  見たこともないタイプだが、間違いなく宇宙船カプセルだとH博士は勘付くと、ひょっとして宇宙人がいるのではないかと職業柄ワクワクして来た。  それはH博士にどんどん近づいて来て彼が釣りを中止して床几から立ち上がり身構える傍で桟橋に堰き止められ横付けするように停まった。  その途端、H博士は危惧して逃げたい気もしたが、好奇心が制し、その場に留まった。
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