大虎

2/6
前へ
/6ページ
次へ
 そこで聞こえてきたのは知らない男性と父の声と、何かが無造作に運ばれた物音だった。  父はひたすら謝っている。相手の人は丁寧な対応だ。  そのような中、うめき声のようなものが響く。  「この声は?!」  聞き覚えがある。  それはなんと母から発せられていたのだ。 役目を果たした車はまるで逃げるように去っていった。  一方我が家の小さな玄関では、バタンドタン!とひっきりなしにのたうち回る怪音が響いている。  「だぁいじょおぶっだぁあって!!」  「このぅやろぉ!」  「#$&"*@△○∞!!」    全く呂律が回っていない。    「ほら、立てって!」  お母さんがどうしたんだ?!何が起こっているんだ?!  私と弟はいよいよ我慢できなくなり、こっそり居間のドアから覗いてしまった。  まるで操り人形のように、体中ばらんばらんにくねらせながら暴れる母、それを何とか落ち着かせようとしている父がいた。  
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加