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目覚めそうになった俺は、もう少し寝ようと努めた。ベッドに入ってから、まだ二、三時間しか経ってない感覚。
そう言えば、ワイシャツのままだったな。けど、明日の仕事の為にも、ちゃんと寝ておきたい。布団をかぶる……?
おかしい。まぶしい。いつも起きる時間はまだ暗いし、電気は切ったはず……しかも、かぶりたい布団も手に触らない。
「へ?」
寝てたい目を思わず開けたが、自分の見慣れた部屋じゃない。
白い部屋。自分が横たわっているベッド以外何も無く、壁や天井は白く、白い光が灯っている。
「ここは、どこだ? 病院か?」
「ショウカンシツ」
「!?」
ロボットが、最近空港やスマホ屋で見るようなAIロボットが、奥から動いて来た。
ロボットは、俺の顔をじっと見つめると、ピピッという音を出して、また奥に戻っていった。
「ショウカン室?」
「ハナレタ トコロ ツレテクル」
ロボットが動かぬまま答える。その答えたに、俺の眉間にシワがよった。
それって……召喚? まさか、自分が、召喚? 何も能力がない、仕事もミスしまくり、叱られてばかりのぽんこつサラリーマンの俺が?
カチャリ……。
馬鹿な頭を必死に動かしていると、鍵を開ける音がして、ドアを見る。
スルスルと滑るようにドアは横にスライドされ、人が一人、入ってきた。
それは……美しい。美しい女性。どこか、懐かしさも感じ……いや、何か、俺と似てないか?
戦闘服らしき服を着た、その俺似の女性は、凛としていた。
ワイヤレスイヤホンのような物を渡され、耳につけるよううながされた。
「突然申し訳ない。私の言葉がわかるか?」
「は、はい。わかります」
「よろしい。これは、伝音という物だが、言葉に困らないし、離れていても用件を伝えられる。
ま、いずれ、ラピカの言語を使えるようになってくれたら、嬉しいがな」
女がそう言って笑ったが、今、俺の頭は疑問で膨らんでいた。
日本語が通じないとは、ここは、どこだ?
「では、簡潔に言う。時間がない。
私は、あなたの星、地球以外の星の者。その星、ラピカの全王の姫、リーヌだ。
そして、あなたは、王子。王が、地球人の女に隠して産ませた者。あなたには、全王の血が流れている」
そっか、俺、どこかの国の人とのハーフかと思ってたけど、宇宙人だったのか。母さんが、冗談ぽく言っていた“宇宙人が父”の話は、本当だったのか……。
突拍子のない、リーヌ姫の話は、すんなり俺の中に受け入れられた。
「あなたの名は? 何と呼べばよい? 私のことは、リーヌと呼べ」
「リーヌ。俺は、武」
「タケル、あなたの力が、今必要。その為、ここに、召喚を試みさせてもらった。
体に宿るラピカのパワーを発する者を感知し、連れてくる仕組だ。よって、召喚されたタケルは、ラピカの血が流れてることになる」
「ま、待って。俺に力なんて無いと思うんですけど……?」
「いや、力は有るはずだ。その力で、我々を助けて欲しい。
ラピカは、魔族の急襲、支配により、全王の権力は飾り物と等しく、魔族の言いなりになった。だが、魔族と闘うべく、他の星々が立ち上がってくれた。して、魔族との戦争を連合の星と共に開始した。
だから、タケル、ラピカを守る為、共に戦うのだ」
「???え?」
許容量が少ない、俺の頭は真っ白だ。
こういう時は、メモでも取って聞くのがビジネスマンなのだろう。が、紙もペンもないし、あったとしても、駄目サラリーマンの俺は取り忘れていただろう。
「では、ついてこい。まずは、タケルの力を試す」
「え、あ、はい」
俺は、慌ててリーヌの後をついていった。
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