練習。

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練習。

目が覚めたら、真っ白な布団に寝ていた。 枕元には電子機器と財布が並べられてる。 すぐさま顔を洗って、歯を磨いて下へと降り た この家の窓際を支配しているリビングには いつも通りその人が座ってる。 「おはよう」 僕は小さく言った。 だが、無言。ただ、無言である。 いつもの事だ。その人は僕と喋らない。 勝手に吊り下げられたフライパンを取って、 冷蔵庫から出したての卵と色の悪いウィンナーソーセージを焼く。 皿にそれを盛りつければ、ふわり香りが部屋 に広がる。 「朝だよ」 僕は言った。 彼女は目を閉じて、膝に手を置いた。 朝の光が照らしたこの部屋はまだ新しいのをいい事にキラキラと我儘に輝いてる。 出来たそれを二つ、テーブルに置けば片付いたテーブルがまた、散らかってしまう。 しかし、また元の状態にすればいいだけの話である。それが分かってるから、僕は躊躇なくそれが置けるのである 彼女はウィンナーを切り、口に運ぶ。 脂一つ垂らさない。 目玉焼きの黄身は半熟では無かった。焼きすぎた様だ。まあ生よりはいいか。 殆ど表情を変えずに食べる彼女だが、見てると時たま睨む事がある。 そしたら、にんまり笑ってやるのだ。そうすれば呆れてまた、食事を再開する。 少し、悪いだろうか? いつもやってる事なのだが、冷静に考えてみたら意地悪かもしれない 食事を終えると、彼女は食べた皿を重ねてシンクに置く。 洗うのは当たり前に僕だ。これもいつもの事である 「じゃあさようなら」 それを今日最後の会話にして、彼女は会社に 出勤して行く。 僕、一人だけになったこの家はどこか憂鬱気味。だから、庭に来る鳥とか猫とかに気分を紛らわせてもらう。 シンクの皿を洗いながら僕は隣人に 「ありがとう」と呟いた。 入ってくる日差しはただ、輝くばかりでこの関係を変える力も無いのだった
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