雪だるま

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 学校の帰り道のことだった。僕が友達と雪合戦をしていると、遠くの方から一人の女の子がじっとこちらを見ていた。多分、僕たちと同じ年くらいで、肌は雪みたいに白くて、セーターとスカートだけでひどく寒そうだった。僕たちは不審に思って雪合戦を一時休戦した。  「寒くないの?」  僕が女の子に声をかけると、友達は「おいやめとけよ」と小さな声で囁いた。こいつは基本的に人見知りなので、近所の人にあいさつするのさえ躊躇う。イカつい見た目に似つかわしくない性格の男だ。女の子はううん、と小さく首を横に振った。  実は、そこから先のことは何も覚えていなくて、女の子も本当にいたのかよくわからなくて、気がついたら僕はいつも通り自分の家のベッドで目を覚ましていた。外には真っ白な雪が降り積もっている。しんしんと雪は降り続けていて、朝日に照らされ優しく輝いていた。 「あれ?なんだこれ」 あたたかい涙がつたっていた。 「おかしいな、ゴミでも入ったのかな、おかしいな」 口ではそういうものの、僕の体は言うことを聞かなくて、気がついたら嗚咽を漏らすほど泣いてしまっていた。赤いマフラーをした溶けかけの雪だるまが、窓の外から僕を優しく見守っていた。
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