Jの悲劇

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 ***  そして、やがてぼくは。鍋の中で目覚めることになるわけですが。  漂ってくるニオイ(鼻ないですけど!)が想像していたものとどうにも違うせいで、ぼくはうつらうつらしながら首をかしげてました(首もないんですけど!)。  いろんな具材と煮られている最中なのはわかります。でも、なんだかこの匂いはまるで。 「あああジャガイモ起きろ、起きろよお……!」 「?」  ニンジン先輩の声が聞こえてきます。ぼくが目を開くと、白っぽい空間の中、先輩が某フリーゲームよろしくガタガタガタガタ、と震えてました。なんでマナーモードなんでしょう。  ていうか、なんで景色が白いんでしょうか。カレーや肉じゃがなら、むしろ茶色っぽい汁になるのでは? 「恐れていたことが、現実になってしまった……俺は、俺はあの食材とだけは仲良くできねーんだ……!あいつが来ると全部主役を持ってかれるし、ニオイがきついし……!」  それってまさか、ぼくも大嫌いなアレでは。嫌な予感とともに、そっと鍋の中から浮上したその時でした。  頭上から降ってくる、真っ白な液体――その名もぼくらの天敵、牛乳が! 「「うわあああああああシチューだあああああ!!!」」  悲鳴をあげたぼくの視界は、一気に真っ白な色で塗りつぶされたのでした。
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