1741人が本棚に入れています
本棚に追加
/228ページ
「君が兄ちゃんの恋人かー! 話は聞いてたから会いたかったよー! ほんとは正月に一時帰国してきた時に会いたかったんだけど、俺が風邪ひいちゃってたから会えなくてごめんね!」
……恐らく、涼也君にとって奏君は苦手なタイプだろう。
多分、普段の涼也君だったらメンチ切って〝うるせぇ、話し掛けてくんな〟とか言ってると思う。
でも、相手が周先生の弟だからか、さっきから「は、はあ……」としか言えていない。
明らかに、戸惑ってはいる。
「あ。兄ちゃんが男の人としか付き合わないのは前から知ってるし、男同士の恋愛に偏見はないから安心してね!
ていうか、俺自身もきょーちゃんのお陰で自分がバイだって気付いたし!」
きょーちゃんのお陰?という、涼也君と周先生の声が綺麗に重なり、二人の視線が俺に向けられる。
「あっ、えと、あの、その! でもビックリだなぁ! 奏君と周先生が兄弟だったなんて!」
俺が強引に話題を変えると、先生が再び奏君の方を向く。
「いやー、ほんとに困った弟だよ。留学費用の頭金もないくせに、絶対留学するって聞かなくて」
「ははは。兄ちゃんが立て替えてくれたんだよねー」
そう言えばイタリアで奏君と話した時、〝留学費用はなかったけど、色々あって何とかなった〟って話していたっけ。
最初のコメントを投稿しよう!