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同じ会社員という立場からして、仕事で決まったことに抗えないのは百も承知だ。
イタリアなら一臣にとっては慣れた土地だろうから、大きな心配はないだろうし。
一生会えなくなる訳じゃあるまいし……一年くらい……うん……。
「……そうだね。でも京ちゃんに会えないのは寂しいな」
「……まあ、アプリで無料通話とか出来るし……」
「……うん」
「と、とりあえず何か注文しようぜ。俺、味噌ラーメン」
「じゃあ僕もそれで」
注文してからすぐ、ラーメンが運ばれてきた。
気まずい空気のまま、ほぼ無言でお互いにラーメンを啜る。
……一臣が悪い訳じゃない。寧ろ、仕事で頑張る為にイタリアに行くんだ。
それなのに、俺が落ち込んでる姿を見せるのは、一臣に対して失礼だろ。
「あ、あのさ、俺は全然気にしないからっ」
ラーメンを食べ終わった後、一臣にそう伝えた。笑顔で、なるべく明るく伝えたつもりだった。
だけど。
「……うん」
一臣も笑い返してはくれたが、分かりやすく切なげだった。
しまった。笑顔で伝えるのは間違いだったかな。
……誰かと付き合うことも、誰かをこんなに好きになることも初めてだから、上手い立ち回り方がよく分からない……。
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