『殺』された法律達と、それがもたらす物

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 既存している法律は、本編第一章を読んで頂ければ解るように、作品世界でも基本的に普通に存在してます…人の暮らしを良くする物は勿論、逆に脅かしかねない物も。  …しかし、それだけです。  まだ全てが語られている訳ではありませんが、本編の時間軸では、愛禁法のせいでその殆どが、運用出来てないのです。  運用できてる法律も忠実に比べてかなり制約が掛かっており、正常に使われているのはほんの一握りになっています。  これは、  『どんなに強力な力でも、その使い方を間違えれば、いくら時間をかけて積み上げたものでもいとも簡単に壊してしまう』  事を、読んで下さる皆様に伝えたいという思いからです。    どんなに国民のためを思って立てられた政策や法律も、使い方を間違えれば市民生活なんて簡単に壊す事が出来ますし、いち国家を滅ぼすことなんて難しくありません。  例えば、アレルギー患者の方を救済するための法律を政府が立てたとします。  これを、人民のことを慮れないような国家が立てたら、どうなるのか。  きっと、何かと理由を付け、『救済』と語って無理矢理家族から引き剥がし、一生幽閉するか、一度に纏めて殺してしまう国家が出てくる事でしょう。  事実、ナチス政権下のドイツが、優生思想に則って行った『T4作戦』において、障がい者の方達の虐殺を『恵みの死』として正当化していますし、もし現代にナチスのような政権が台頭すれば、それは現実になりかねないでしょう。  更に学者の方が構想していますが、その『粛清』が終われば芋づる式に、新たな弱者が『恵みの死』として『粛清』される…かも知れません。  逆に、人民のことを考えている国家ならば、どうするのか。  きっとこれに則り、時間をかけて医師が、人々が力を合わせて、根本的な治療法を見つけ、理解を深めようと尽力するでしょうが、それも度が過ぎれば、長年染みついた考えを改めようとしない人を、徹底的に排除しようとする者が出て、それが同調圧力によって増大し、昨今のコロナ蔓延下における、自粛警察のような事態が起こってしまうかもしれません。  どちらを選んでも、自分達が今直面している『選民主義』になってしまう…これではキリがありません…。    …と、この様に、人が作った物は完全であり、また不完全でもあります。  作られた物は使い方によっては人を、いや世界を壊すことの出来る凶器にもなり得ます。サスペンスドラマに出て来る拳銃や刃物はその主な一例でしょう。  ですがそれは、決して形ある物ばかりとは限りません。  法律のように、人を取り締まるシステムも、使う者によっては凶器となり得ますし、政治家をはじめとした権力者の発言もまた然りです。  当然それは、ネット掲示板やSNSのように国民が独自に作ったシステムや、掟も同じです。  コミュニケーションツールはボタン一つで、人をも殺せる凶器にだってなり得えます(事実、女子プロレスラーの木村花選手が、ツイッター上の誹謗中傷が原因で、22歳の若さで命を落とされています)し、変わらぬままの風習や掟のせいで村八分が起こり、その被害に遭った一人の男性が自分を排除しようとした村人達を惨殺するという痛ましい事件が発生しています。それを使い、従って生きている私達も他人事ではありません。  現に作中において、政治家達が暴走したことにより、今まで時間をかけて築き上げたルールが瓦解し、州民の大半が当たり前のルールを守れなくなり、かつ守らせないという暴挙を連日起こしているのです。  果てには、後述する鴉付きと呼ばれる子供を殺して金を貰い、己の生きる糧にする輩が出てきてしまうなど、現実の出来事ならば罪として裁かれる事が許される事態にもなっています。  ですから、私達は作られた物を適切に扱い、作る人をしっかりと見張らなければなりません。  それが、私達の身近に居る人であったとしても…。  
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