目覚めたら雲の上

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目覚めたらそこは真っ白な雲の上だった。 座っている場所から小さな雲が漂っている。 空は真っ青で、太陽の光が差し込んでいる。 辺りを見渡すと、3人の男女が倒れていた。 男が起き上がって言った。 「頭痛い・・・ここはどこだ?」 若い女が起き上がる。 「知らないわ、こんな白いところ」 中年の女が起き上がる。 「どこでしょうねえ」 3人は辺りを見渡す。 俺は言った。 「確か覚えているとは、乗っていたバスが崖から転落したところ」 「ええっ、転落したんですか」 若い女の目が丸くなる。 「そんな記憶ないけど」 男が頭を抱える。 「じゃあ、もしかしてここは天国では?」 中年女が言う。 「そうかもしれません」 俺は頷いた。 「そんなあ、これから旅行だったのに」 女が泣きそうな顔で言った。 「いいじゃないか、ここは天国。ずっと幸せでいられるんだ」 男がほっとしたような顔で言った。 「まあ、こんな私でも、天国に行けてよかったですよ」 中年の女がほっと息を吐いた。 「何か天国行けないと思うようなことがあるのですか?」 俺は中年の女の顔を覗き込んだ。 「そりゃ、私は大きなことではないとはいえ、いろいろ悪さをしてきました からねえ」 「どんな?」 俺は聞く。 「そりゃ、いろいろな男を色気仕掛けで引っ掛けたり、 困っている人に甘い言葉をかけてお金をだまし取ったり、 とにかくいろいろやりましたよ」 「そうですか」 「すごいなおばさん」 男が身を乗り出した。 「でも俺はもっとすごいぜ。ガキの頃からコンビニやスーパーからこっそり 物を取ったりした。それで1回も捕まってない。 でも何よりすごいのは覆面を被って銀行に行ったことかな。 刃物を持って見せただけで大量の金がもらえたぜ」 「それ、ニュースで見たかも。未だに捕まっていなんでしょ」 女が興奮したような声を出した。 「ああ、その金のおかげで今まで楽な生活だったよ」 男は大きく頷いた。 「私はもっとすごいのよ」 女は話し始める。 「私は自分の親を殺したの」 「「「ええ?」」」 俺達は驚いた顔で女を見た。 「父親も母親もいつも本当にうるさくて。二人が乗る車に 細工をしてやったの。そしたら事故に遭って二人とも死んでくれた」 「本当にすげえな、バレなかったのか?」 「うん、自動車は爆発したから。証拠も全部燃えた。 周りは皆同情してくれて、保険金も手に入って本当ラッキーだった」 女はうっとりとした顔で言った。 「そのおかげで今まで幸せに暮らしていたわ。 だけど死後の世界は地獄に落ちるかも、と怖かった。 だけど天国に行けるのね」 「そう言えば、あなたは?」 中年女は俺に聞いた。 「俺ですか?・・・実は俺、皆さんが乗っているバスの運転手だったんですよね」 「そうなんですか?」 3人は目を大きくして俺を見る。 「運転を間違えてしまって、皆さんを死なせてしまいました。 ごめんなさい」 俺は頭を下げる。 「別にいいよ。これから天国に行けるんだし」 男は頭の後ろで手を組む。 「いいですよ。誰だって間違えることはあります」 「いいよいいよ、これから天国で楽しく暮らせるんだし」 3人はけらけら笑った。 その時、俺達が座っている雲が上に盛り上がったかと思うと、 そこから巨大な黒い手が出てきた。 「何これ!」 尻もちをついた女は大きな手を見て叫んだ。 その手は俺達の方向に向きを変え、追いかけてきた。 俺達は必死で逃げる。 「何だよこの化け物!」 「もしかして、地獄へ引きずり込む手じゃないか!」 「地獄!?そんなの嫌ですよ!」 黒い手はすごい速さで追いかけてくる。 少しでもスピードを遅くしたら追いつかれそうだ。 ずっと走り続けていると、息が切れて足が動かなくなってきた。 「こうなったら仕方がない」 男が言った。 「お前が地獄に行け!」 そして立ち止まると、俺を手の前に押し出した。 「わ!」 俺は衝撃でよろける。 黒い手が俺の体を掴んで持ち上げる。 俺は黒い手を拳で叩くが、びくともしない。 「何でこんなことするんですか!?」 俺は男に叫ぶ。 「お前の運転ミスで死んだんだろ!?だったらお前が責任とれよ」 「そうよ!」 男と若い女は叫んだ。 「そうですよ、あなたの責任です」 中年の女も頷いた。 「へえ?やっぱりそうするんですね」 俺は低い声で言った。 すると、3人の後ろから別の黒い両手が現れた。 3人が逃げる隙もなく、それらは3人を捕まえ、 地面に引きずり込んだ。
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