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「どこかの森で怪物が生まれたらしい」
“うわさ”が広まった。
ここは交通の要所。カラブ運河の街。東西南北の大陸を結ぶ唯一の地点だ。
「かつての大賢者が封印していたはずなんだが、なんでも、西の大陸の魔女が封印を解いたようだ。そこのダンブル大森林に住んでいるようだ。結構近いよな」
井戸端会議で、物知り顔のじいさんがそう言った。みんな深刻そうな顔をしている。
「おれもそのうわさを知っているよ。東の大陸のハンターチームがものの五分で壊滅したそうだ」
一人の男の声はうわずっていた。東のハンターチーム。それは連係プレイを得意としている部族たちで、狩れない魔物はないと言われる狩猟民族だ。それがわずか五分で壊滅するとは……。多くの市民を震え上がらせた。
「なんでも、3日前に北大陸のギルドの精鋭部隊が、追い詰めたけど、うまく逃げられてしまったそうだ。A級ランカーを集めた精鋭部隊だったのに、何人も重傷者がでたそうだよ。」
「このまま放置して、成長していくととんでもない災厄になるな」
「ああ、どうしたらいいんだ。どこかに移住するか?」
「バカやろう。どこに逃げても同じだ」
そのうわさは瞬く間に広がった。
「ねぇお父さん?」
「どうしたんだ?怖くなったか?」
「そうじゃなくて、さ。どうして、その怪物を倒すための人たち、この街に来なかったんだろうなって思ったんだ」
※
「実験は順調ですね」
「ああ、おもしろい結果が得られそうだね。噂を作ったかいがあったってもんだよ」
「みんな気がつきませんね」
「そうだね」
「「まさか、このうわさ自体が、“怪物”だなんて……」」
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