2人が本棚に入れています
本棚に追加
私は彼の秘密を知っている。
彼は私が好きなんだ。二年生の時に隣の席になってから、彼は私のほうばかり見ている。
彼の友達からも、「どうやらあいつ、キミのこと好きみたいなんだ」という話も聞こえてきた。
彼は隠し通していると思っているみたいだけど、こんなにわかりやすいことはない。
だって、私が彼のほうを見るとすぐに目を遠ざけるのだ。
それはもう自白みたいなものなのに。
勇気が出せないから、私に告白できないんだろうな。そんないくじなしには、少しお仕置きが必要だと、私は彼に積極的に話しかける。たまに、恋の話になるけれど、私はここでも彼に意地悪する。この前は、好きな異性のタイプの話になった。
「頼りがいがあって、引っ張ってくれるひと」
私はそう答えた。優しくて気配りができる彼とは正反対だ。彼はそれ以降、ちょっと男っぽくなった。効果てきめん。
そして、私にも彼に秘密にしていることがある。それは、私が彼のことを大好きだってこと。
たぶん、これはうまく隠し通せている。だって、彼は私に告白してこないから。私が彼の告白を拒否することは絶対にない。
なのに、彼は告白してこない。だから、私は希望をこめて彼にウソをついたのだ。
少しでも勇気を持ってほしくて……
だから、私たちはお互いに秘密を持っている。それは、とても大事な秘密だ。
目がさめた。
そこには真っ白な世界が広がっていた。
「もうすぐ、卒業か」
私たちは、銀世界に足跡を刻む。
最初のコメントを投稿しよう!