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少年は丸顔にスポーツ刈りで、背丈から七、八歳くらい。白い開襟シャツに黒い半ズボン姿は小学校の夏服にも見えるが、かわいそうに、靴をどこで脱ぎ捨ててきたのか、裸足だ。
黄昏という言葉は「誰そ彼は」から来ていて、顔の区別が付きにくい暗さを意味する。今の状況はまさにその通りで、ホント、よく言ったものだと感心しつつ目をこらすミコトは、お地蔵さんのように動かなくなった少年の子細を観察していると、あることに気づいた。
(……ああ、やっぱり。あの子、幽霊ね)
彼女は後ろを振り返って人の気配がないことを確認した後、少年へ向き直って歩み始めた。
「迷子に――なったのかな?」
微笑む彼女の問いかけに答えない少年は、真一文字に口を結んで、じーっと彼女の姿を見つめている。はっきりと色まではわからないが、青白い顔をしているように思える。
「どこから来たの?」
しゃがんで目線を合わせると、やっと少年が口を開いた。
「おねえちゃん。ボクがみえるの?」
「見えるよ」
「こわくないの?」
「怖くないよ」
そう言いながら再度振り向いて、誰もいないことを確認する。
「こうやってあなたみたいな幽霊とお話ししているところを誰かに見られると、お姉ちゃん、ヘンな人に思われるからいつも困るんだけど」
実は、ミコトは霊が見えて霊と会話も出来る能力者。霊の言葉を語る口寄せの巫女とはまた違った能力者だ。
ミコトの笑顔にまだ心を開かない様子の少年は、目を合わせたままだ。
「おうちに帰れないのかな?」
再度の問いかけに、少年は急に寂しそうな顔になってうつむいた。
「ボクのおうち、あるのに、きえちゃったんだ……」
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