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あれから数ヶ月が経った。男は今、あの部屋に住んでいる。
女を殺した翌日、目が覚めると白い部屋にいた。いや、きっとこの部屋はあの女の部屋なのだろうが、あったであろう家具も、殺したはずの女も、大量にあったあの箱もきれいさっぱりなくなっていたのだ。まるで最初から何も無かったみたいに。何にもない、ただただ白いこの部屋はまるであの箱の中みたいだった。会社だって、自分の家族友人だって、それこそ警察だって気にしなければならない事がやらなければならないことが沢山あったが、それでも男はなぜだかこの部屋から出る気が起きなかった。何となく、大丈夫な気がしたのだ。このままこの部屋でぼーっとしていればか、上手いこと世界は回っていくと心のどこかで確信していたからだ。
ある日、向かいのアパートに電気が着いた。どうやら若い女が越してきたようだ。やる事はわかっていた。カーテンを開けて、箱を毎日置いていく。次第に女はこちらに興味を持つはずだから、タイミングを見て家を出て___
そういえば。ふと、気になっていた開けてみた箱の中身は何にもない空だった。まあ、どうでもいいが。
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