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とある日の仕事帰り、男は偶然あの部屋から女が出てくるのを見つけた。こんなチャンスを逃すまいと咄嗟に女を食事に誘うと、女は簡単に了承し男をなんと自分の家へ招き入れた。不用心な奴だなとは思ったが、こちらとしては願ったり叶ったりだった。
それからというもの、男はしょっちゅう女の家に行った。なかなか、あの部屋に入れて貰えないし、箱の中身だって教えてはくれなかったからだ。
だから、箱への興味は強くなっていった。あの箱の中身が見たくて堪らなくなった。四六時中、箱の中身を考えては一喜一憂し、夢の中では箱の中で箱と一緒に生活した。世の中の物を全て箱として捉えるようになった。男が住むこの部屋も箱、自分の人格が入っているこの体も箱、自分たちが住んでいるこの世界も箱。だが、どんな箱よりもあの白い箱が1番だった。あの箱が欲しくなった。あの箱を持っている女が羨ましくなった。あの箱が欲しくなった。あの箱を持ってない自分に憤慨した。あの箱が欲しくなった。あの箱を持っている女が憎くなった。あの箱が欲しくなった。あの箱が、
次に女に会った時、男は女を殺した。感情は籠っていなかった。だって、あの白い箱に感情はなさそうだったから。
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