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宿命の対決
ハツカネズミの天使司書さんの仲間が外の騒ぎを聞きつけ、奥の閲覧室から続々と加勢に出てきた。
その数およそ一千匹。
かたや攻めるネコは二匹。
多勢に無勢、いくらネコでもネズミ千匹が相手では勝ち目はない。
「チューチュー、キィーキィー」
「シャアアア」
両者一歩も譲るものかと威嚇の応酬が始まった。
緊張の度合いが増す中ダイアンが口火を切った。
「神様のところに挨拶に行く日を元旦じゃなく一月二日だと騙しやがって、シャアアア」
「まだ十二支にネコ族が入れなかったことを根にもっているのかチュー!」
「神様が元日の挨拶に訪れた動物を順に十二支にすると言われたから僕らは楽しみにしていたにゃー。それを自分らが十二支に入りたいがために善良な我らネコ族を騙すような卑怯なまねをしやがって、シャアアア」
「騙される方が悪いのさ。相変わらずあんたら猫は猫の額ほどの知恵しかないんだなチュー!」
「おだまり!」
ピーチが前に迫り出して吼えた。
「おほかむづみの命さまのお嬢様とて容赦はしませんぞチュー!」
今まさにネコ対ネズミの宿命の対決が始まろうとしていた。
天使ねこ対天使ネズミ。
いったいどっちが強いのか?
緊迫の度合いが増す。
とその時、
「ネズミさん、あたし図書館の入館証があります」
あいちゃんが学生手帳にはさんでいた学校図書館の入館証を受付のハツカネズミ天使司書さんに提示した。
「あ、これは失礼しましたチュー」
ハツカネズミ天使司書さんは笑顔でその入館証を確認すると、
「どうぞお入り下さい」
親切に閲覧室の扉を開けてくれた。
「ネズミさん、ネコちゃん達も一緒に入って良いでしょ?」
「ハイでチュー」
「ありがとうネズミさん」
あいちゃんが笑顔で手を振ると、ハツカネズミの天使司書とその仲間達はいっせいにチュー、チューと声をあげて喜んだ。
「さ、行きましょう」
「にゃー」
「みゃー」
とそんなわけでぼくらはあっけなく閲覧室に入ることが出来たにゃ。
「ここが魂の図書室ね……」
すべての本は個人ごとに整然と並べられ、その数は星の数より多いのだ。
「これらすべての本が魂の記録なんだにゃー」
「この中からどうやってあたしの本を探すの?」
「念じるみゃー」
ピーチが椅子に飛び乗って腰を下ろした。
「念じるって意味わかんない」
あいちゃんが困り顔になる。
「わたしの本を見せてくださいって心の中で思えばいいにゃー」
ピーチは微笑んだ。
「心の中で思えばいいのね」
「そうにゃー」
ぼくは机の上に箱座りした。
あいちゃんは立ったまま目を閉じ、
(あたしの本を見せてください)
と心の中で念じてみた。
すると、ポン! とあいちゃんの手に一冊の本が現れた。
「わぁ! 魔法みたいだわ」
「こっちへ来るにゃ」
ぼくは机の上からあいちゃんに向かって招き猫のポーズで手招きした。
「うん」
あいちゃんは本を大切に持ってぼくとピーチがいる机にやってきて、椅子に腰掛けると真ん中のページを丁寧に開いた。
「わぁ! 映像が流れているわ!」
あいちゃんは驚きの声をあげた。
「魂の記録はすべて立体映像として残っているんだにゃー」
「じゃ、未来のお婿さんも立体映像で出てくるの?」
「そうみゃー」
「未来の彼氏を見てみる? それとも前世の自分史を見てみる?」
あいちゃんはしばらく沈黙した。
「決めたわ!」
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