act.4

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「ーー3度目の投影開始しました」 「異常は?」 「ありません」 「続けて」 ここは某県の山奥にある医療施設。 ただの医療施設ではなく、犯罪を犯した罪人が収監されている。 ただ、普通の警察病院とは違い、ここに収監されているのは認知症を患い、犯罪を犯した人達。 医療が発展し、人間の寿命は格段に延びた。 しかし、それと同時に認知症を患う人達も増え… そうなってしまった親の処遇や介護に困った子ども達は介護施設等を利用するようになった。 しかし少子化の影響を受け、介護士は不足。 施設に入れない人達は、家で介護を受けるしかなく。 子どもが目を離した隙に家からいなくなったり、病院に入院していた人が脱走したり。 その末に犯罪を犯してしまう事があるのだ。 認知症患者は法的に罰する事が出来ない。 記憶を失い、正常な判断が出来ないからである。 だが、犯罪を犯した認知症患者を野放しにしておくわけにはいかない。 いつまた犯罪に手を染めるか分からないからだ。 その結果、作られたのがこの施設。 政府公認のこの施設は、医療施設であると同時に、認知症患者が罪を償う為の場所でもある。 認知症患者は自分の犯した罪さえも忘れてしまう。 その為、ある特殊な装置を用い、患者の脳へ直接アクセスする。 そこへ犯した罪の映像を送り込み、自分が犯してしまった罪を認識させ、反省を促すという物。 認知症犯罪者は過去の罪を何度も、何度もリアルタイムで経験する事になる。 これはまだ試作段階で、現在ここに収監されているのは殺人という重い罪を犯してしまった人だけ。 今後どのようになるかはこの結果次第となる。 例え記憶はなくとも、人は自分の犯した罪を償うべきである。 現総理大臣と法務大臣によるこの法案は、野党の反発も大きかった。 しかし、国民の多くはこの法案を支持し、そして実行に移された。 この法案は、やがては精神病患者にも適用されるだろう。 精神障害により犯罪を犯しても無罪となった人間は少なくない。 多くの国民は、そんな人間達への制裁を望んでいるのだ。 認知症だから、精神病だから、罪を犯しても裁かれない。 そんな時代は終焉を迎え、精神病患者は通常の刑罰よりももっと過酷な罰を受ける事になる。 そうなった時、精神病患者の振りをして精神鑑定を受ける人間がどれほどいるのだろうかーー
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