act.2

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ーー翌日。 昨日のように朝食前に部屋を出ると呼び止められてしまう。 そう思い、朝食が来るのを大人しく部屋で待っていた。 朝食を食べ終え、食器を下げに部屋を出ると、ナースステーションから看護師が顔を出してこちらを見ていた。 私が食器を下げて部屋に戻るのを確認し、部屋の入口についているスイッチを押す。 こうして私が部屋を出ると、すぐに誰かしら来て同じような事をする。 監視されているようで良い気分ではないけど、下手に騒いで拘束されても困るので、何も気付いてない振りして部屋に戻った。 荷物をまとめて、また部屋から出る。 先程と同じようにナースステーションから人が覗いてきたけど、私は気にせずトイレに入った。 昨日、散々荷物を抱えて廊下を彷徨(うろつ)いていたからか、今では荷物を持っていても誰も気にとめない。 ただ、部屋から出ると必ず誰かが見に来る。 だからまずはトイレに行くふりをして、様子を見る事にした。 暫くしてトイレから様子を伺うと、誰も見ていなかった。 廊下には清掃業者らしき人と数人の患者がいるだけ。 私は急いでトイレから階段の踊り場へ移動した。 エレベーターはナースステーションの目の前だから、使おうとすればすぐに見つかってしまう。 しんどいけど、階段で下りるしかない。 昨夜、改めて荷物を確認していたら、小銭入れが見つかった。 大した金額ではないけど、タクシーを呼ぶ事くらいは出来ると思う。 家に着けばお金もあるし、最悪銀行まで連れて行って貰ってお金を下ろして来れば良い。 まずは一階まで行って、そこで公衆電話を探さないと。 病院だから受付の近くにある筈だわ。 手すりを持って、慎重に階段を下りて行く。 階段途中にある階を示す表示を見ると、私が入院していたのは4階だと分かった。 3階まで下りて、一息つく。 年寄りの体に階段は本当に辛い。 階段の踊り場からそっと3階を覗く。 ナースステーションには誰もいないようで、人の気配がない。 急いでエレベーターに向かい、ボタンを押す。 エレベーターは2階に停まっていて、すぐに3階にやって来た。 上の階には利用者がいないらしく、扉が開いたエレベーターは女性の声で「下に参ります」とアナウンスが流れた。 私はそれに乗ると、1階のボタンを押した。 エレベーターが動き始め、安堵する。 これで漸く家に帰れるわ… エレベーターが1階に到着して、廊下に出る。 自分がどこにいるのか分からないので、取り敢えず廊下を右に進んだ。 すると、開けた場所に出て沢山の人が往来していた。 左側に視線を向けると受付が目に入り、その上には番号を映し出す画面が設置されていた。 受付とは反対側に視線を向けると、出入口の自動ドアが目に入る。 そしてそのすぐ側に公衆電話が2台設置されていた。 私は足早にそこへ向かう。 電話をかけようと小銭を取り出し、受話器を取ったところで警備員らしき格好の男性に声をかけられた。
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