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 俺一人なら昼は牛丼などで済ますのだが、今日は若い女性も一緒だ。駅の地下にあるレストラン街を、何を食べようかと相談しながら少し歩いた結果、小洒落たイタリアンカフェに決定した。  ランチメニューのパスタセットを注文し、とりあえずひと息つく。 「席、空いててよかったですねえ」  坂本さんが周りを見渡しながらしみじみと言った。平日とはいえ、さすがに昼食時だ。そこそこ広い店内がかなり混雑している。 「そうだね。もうほとんど満席だもんね」  それにしても女性客が多い。恐らく八割以上を占めている。  駅から少し行けばオフィス街だ、近隣の企業の女性社員達だろう。男性陣は、すぐ隣の立ち食いカレー屋やその先の麺処に集まっているに違いない。そんなことを考えていると、 「いいなあ。専業主婦って」  坂本さんが、一聞すると脈絡のなさそうなひとことを放った。確かに彼女は昨年入籍して、それでも変わらず仕事をしてはいるが。 「どうしたの? 急に」 「だって、そこのテーブルも、あとあそこも……あっちも……多分主婦達の集まりですよ。平日の昼間に優雅にランチ会なんて羨ましいじゃないですか」  まあ中には独身の方も混ざっているかも知れませんけどね、と彼女は小さく付け足す。 「え、どうしてそんなことがわかるの?」  てっきり全員がこの界隈のOLだと思っていた俺は、驚いて聞き返した。 「見ればわかりますよ。いちばんわかりやすいのはファッション? オフィスカジュアルとお出かけ用のお洒落って、やっぱり雰囲気が違うものです」 「へえ、そうなんだ」
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