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(1)
重たい目蓋をゆっくりと持ち上げれば、見慣れた仄暗い天井が目に入った。隣からはすうすうと規則正しい、夫の寝息。彼を起こさないよう細心の注意を払い、わたしはベッドからするりと抜け出した。
バスルームで顔を洗い、今度は寝室の隣の部屋へと向かう。グレーのカーテンの向こうでは、まだ白味がかった空の袂が、今まさに赤く燃え上がろうとしていた。
起きたらまずバルコニーの鉢植え達に水をやるのが、毎朝の日課。ジニアはもうこの時期、小さな花々を色鮮やかに開かせる。でも、アサガオ達はもう少しだけ先かしら。
見下ろした道路には、まだこんな時間なのに駅へと足早に向かうサラリーマン。犬の散歩をする若者や、ジョギングをする年配の姿も見受けられる。
梅雨はもう明けたのだろうか。思いきり吸い込んだ澄んだ空気に、雨の匂いは微塵も感じられない。伸ばしかけの前髪をなびかせる、若々しく青い風。
柵の上に止まった早起きな雀が、まるでおはようの挨拶のようにチュンチュンと可愛らしく囀る。
いつも通りの朝。昨日と同じ朝。けれど、眩く神々しい朝。朝がこんなに美しい生命力に溢れているなんて、今まで知らなかった。
ああ、貴方に会える今日という日は、見るもの全てが眩しくて愛おしい。
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