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キッチンで朝食の支度と夫のお弁当作り。今朝は豆腐と大根の味噌汁、ネギ入り玉子焼きだ。玉子焼きはお弁当にも入れる予定。お弁当にはあと、ほうれん草のソテー、野菜の豚肉巻き。ご飯には彩りも考えて、のりたまのふりかけをかける。
彼は偏食家で、焼き魚は一切口にしない。パンも食べない。お芋も豆も嫌い。好きな食べものはラーメンとお菓子。献立には毎度骨が折れるのだ。
もしもひとりになったら、どうやって生きていくのかしら。毎日ベビースターにお湯をかけて食べそうで不安。
お弁当のご飯の熱が冷め、ようやく蓋をしようとしたところで、
「おはよう、美奈子」
入り口から夫がまだ眠たそうな顔を覗かせた。その百八十センチを超えるスラリと高い身長を見るにつけ、偏食なのによくも立派に育ったなあ、と感心する。
「おはよう、涼。朝ごはんできてるよ」
わたし達夫婦には、まだ子供がいない。だから結婚三年目になった今も、交際していた時と変わらず、下の名前で呼び合っている。
いつかは互いを「お父さん」「お母さん」と呼び合う日が来るはずだった。けれどきっともう、そんな日は訪れない。
わたしは夫と、離婚をするつもりだ──。
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