夕暮れにご注意を/テーマ:怖い噂

1/1
前へ
/138ページ
次へ

夕暮れにご注意を/テーマ:怖い噂

 とある小さな町の学校で、ある噂が広まっていた。  それは、人の影の中には何かがいるというものだ。  だが、現代の学生、それも高校生がこんな話を怖がるはずはないのだが、この学校の学生達の空気は重かった。 「なんか最近、皆暗くない? なんか影がどうのとか」 「え、噂知らないの?」  友達に詳しくを聞くと、どうやら夕暮れ時になると、その影の中から何かが出てきて、その人を影の中へ引きずり込むというのだ。  そんな作り話を信じて、高校生がこんな深刻になっているのかと笑うと、友達が両肩を思いきり掴んできた。 「人が、消えてるんだよ」 「え……?」  真剣な表情の友達だったが、怖がらせようとして言っているのだろうと、とくに本気にはしていなかった。  だがその翌日から、その友達は行方不明となり、二度と姿を現すことはなかった。 「まさか、本当に影が……」  そんなことあるはずがないと思い続けて数ヵ月が経つと、学校の生徒や先生のほとんどが行方不明となり、次第に生徒達は恐怖で欠席をし部屋に閉じ籠る者までで始めた。  そんなある日の帰り道、周りの家を見るが、どこのカーテンもしっかりと閉まっている。  もう陽も暮れ始め、外を歩く人すら誰もいない。 「早く帰ろ」  段々と不気味になり始めていく町の様子に、早く帰ろうと早足になる。  そして、何か背後に気配を感じ振り返るが、そこには誰の姿もない。  あるのは自分の影だけで、再び歩みを進める。  だが、また感じる何かの視線に次第と走りだし、ようやく家の前まで着き呼吸を落ち着かせると、ドアノブに手をかけた。  〝つーかまーえたー〟  背後から伸ばされた黒い何かに引きずり込まれ、その少女も行方不明となってしまった。  今ではその町に住むものは誰一人としていない。  だが、こんな小さな町で起きたことなど誰も知るよしもなかった。 《完》
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加