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「今日皆に集まってもらったのは不逞浪士の件なんだが」
話始める新選組局長の近藤 勇。
内容は、歳三と話し合って決めたものだ。
女の話によると、明日不逞浪士が吉原に集まるらしい。
そこで、新選組の幹部隊士数名が吉原内部に潜入。
残りの隊士達は外で見張ることが決まった。
吉原の内部に潜入するのは、総司と女。
他は外の見張りとなったのだが、今はあまりよくない組み合わせだ。
先程あんなことがあった二人を一緒にしていいものかとも思った歳三だが、話し合いで決まってしまった以上仕方がない。
こうして不安を残したまま翌日を迎え、不逞浪士が集まるとされる夜になると、女と総司は吉原内部に潜入する。
外で見張る歳三は二人のことを心配していたが、無事何事もなく、その夜不逞浪士を一度に捕縛することができた。
他の幹部隊士達が捕まえた不逞浪士を連れていく中、歳三は総司と女の姿が見当たらないことに気付く。
「どこに行きやがったんだ」
周りを見るが二人はおらず、嫌な予感を感じ辺りを探していると、路地で何か物音が聞こえ近づいていく。
するとそこには、探していた二人の姿がある。
声をかけようとしたがあることに気づき足が止まる。
暗くて見えにくいが、何かがキラリと光ったのを歳三は見逃さなかった。
「総司、何してやがる」
雲で隠れていた月が顔を出し、総司が握っている刃物が今度はハッキリと見える。
女の助けを求める視線が向けられたその時、歳三の体は勝手に動き、総司が握っていた刃物を奪い取った。
「なんで……。土方さんは近藤さんだけじゃなく、僕からこの子まで奪うつもりなんですか!!」
「何言ってやがる」
総司が勇を慕っているのは知っていた。
だが、歳三は総司から勇を奪った覚えはない。
それに、女のことも奪おうとはしていない。
この状況で止めるのは当然のことだ。
「土方さんはこの子のことが好きなんですよね。隠したって見てればわかりますよ」
「さっきから何訳わからねぇこと言ってやがる」
「訳わからないことですか。なら、わからせてあげますよ」
総司は女を引き寄せ口付けをする。
昨日よりも激しく深い口付けに、女から声が漏れ始め、気付くと歳三は総司を殴っていた。
「土方さん、自分が今どんな顔してるかわかりますか? 嫉妬で歪んだ自分の顔を見た方がいいですよ」
「俺が嫉妬で殴ったとでも言いてぇのか」
「そうですよ。土方さんはこの子のことが好きなんですよ。本当は僕が羨ましかったんじゃないですか」
ニヤリと笑みを浮かべる総司に否定の言葉を口にしたい歳三だが、何故か否定できない自分がいる。
何も言わない歳三の様子に、総司はフッと笑みを溢すと「今度は僕が土方さんの大切な人を奪います」と言い残しその場から去っていく。
残された歳三は女がいることを思い出し、慌てて総司の言ったことはでたらめだと否定すると「わかってますよ」と女はぎこちない笑みを浮かべる。
その後、二人で屯所に戻り、女を部屋まで送り届けた歳三の目に、首筋についた紅い痕が映る。
総司の言葉が頭を過り、歳三にとって大切な人、それは、今の自分の感情が知っている。
歳三は部屋に入ろうとする女の腕を引くと、自分の腕の中に閉じ込めた。
本当はこのまま口付けたいところだが、大切な女にそんなこと出来るはずがない。
「土方さん……?」
「悪い。やっぱりさっきのは無しだ。俺はお前に惚れている」
今まで知ろうとしなかった自分の気持ちを知り、まるで固く閉ざされた心がようやく解けたかのような感覚。
総司には奪わせねぇと心で強く思い、女を抱き締める腕に力が込められた。
《完》
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