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「何か実感わかねーよな」
「だね」
「あと二日で世界が終わるとかさ、なんかピンとこねぇ」
「私も」
そんな会話をする二人の前に分かれ道が見えると、二人はまた明日と別々の道を行き家へと帰る。
それからも、普通の日常は過ぎ、気づけば世界の終わりを目前に控えていた。
「明日は来ないのにまた朝寝ですかー?」
「だから寝てないっての」
今日も変わらない日常。
そして、変わらない二人の関係。
だが、そんな変わらない日常も世界の終わり目前ともなれば変わってくる。
登校生徒は数名のみ、先生ですら休んでいる人もいる。
最後くらい皆家族と一緒に迎えたいのだろう。
それでも、今日という時間は過ぎていく。
秒針が時を刻むごとに、世界の終わりは近づいていく。
「最後の授業だと思うと、なんか寂しいもんがあるよな」
「そう? でもまぁ、現実味はわいてきた」
変わらない二人はここにいても、周りは変わっていく。
そして、今日もいつも通り二人一緒に帰路を歩く。
何故か今日は会話はなく無言のまま、何時もの分かれ道が見えてくると、突然辰馬が立ち止まる。
「たつ——」
「んじゃ、また来世でな! 世界の終わりくらいは家族と一緒に過ごすとすっかな~」
何時ものように笑ってわかれる辰馬と違い、自分の表情は家に帰った後も暗かった。
最後のお風呂に最後の食事。
そして家族との別れの挨拶は、お休みで終わる。
自室のベッドで横になるが、なかなか寝つけず天井を見つめてしまう。
「何時だろう……」
スマホの画面を見ると、突然スマホが鳴り、つい電話に出てしまった。
「よっ! まだ寝てなかったのかよ」
すると聞こえてきたその声は、自分が想うただ一人の想い人の声であり、何でと思ったが、辰馬との会話がそれを言わせない。
世界の終わりを目前に控えて電話なんて、一体どうしたのだろうかと、少しからかうように口にする。
「何々? 辰馬、一人で寂しくなっちゃったとか?」
ニヤニヤと笑みを浮かべながら言うと、返ってきた言葉は予想外のものだった。
「正解、だから来ちまった。やっぱ最後は好きな奴といたいだろ」
「え?」
一瞬思考が停止すると、スマホを片手にそっと立ち上がり、窓のカーテンを開ける。
すると家の前には、笑みを浮かべながら手を振る辰馬の姿があった。
「あんた、馬鹿じゃないの? 世界の終わりまであとどれだけだと——」
「ははッ! まぁ、いいじゃねーか」
「何笑ってんのよ……」
一秒でも早く愛しい人の傍にいきたくて、スマホが手から滑り落ちたことも気にせず部屋から飛び出す。
鼓動が高鳴る音と外の警報が重なり外に飛び出すと、夜のはずなのに、白い光が目の前に広がっていく。
そんな中、辰馬を抱き締めると、二人を白い光がのみこんだ。
世界の終わりが目前となったとき、人は一番愛しい者を思い浮かべ、きっと動かずにはいられなくなるのだろう。
《完》
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