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「地味子のくせにウルフくんと帰るなんて生意気」
「鏡でも見たら?」
悪口の数々を浴びせられた後教室に戻ると、私は席につき視線を落とした。
そんな自分に声が掛けられ、その声音で直ぐにウルフくんだと気付くが顔を伏せたまま静かに「放っておいて」と言う。
すると、何時も私の事をからかっている二人の女子がやって来て「地味子なんて相手にしないで一緒に話そうよ」とウルフくんを誘う。
だが、ウルフくんの発した言葉で、女子二人は黙り込む。
「俺は、地味子なんてバカにしてる女と話すことなんてない。それにお前も、いつまでそうして顔を伏せてる気だよ」
「放っておいてっていってるでしょ」
これ以上女子達に虐められるのが嫌で冷たくすると、ウルフくんは私の腕を掴み立ち上がらせた。
「私に構わないで!」
「それは本当にお前の本心なのか? 今怒ったみたいに、お前をバカにしてる奴等にも言い返せよ」
簡単に言ってくれる。
そんなこと出来るはすがない。
出来ていれば今私はこんな気持ちになっていないのだから。
本当は、地味子なんて呼ばれたくない。
でも、鏡で見る自分は本当に地味で、周りがそう言うのも当然だと思った。
私は静かに「もう構わないで」と言うと席につく。
それから下校時間。
あれからウルフくんが声をかけてくることはなかった。
これで、女子達から目をつけられることもないだろうと安堵していると、帰り道に同じクラスの女子二人が目の前に現れた。
「ほんと、アンタムカつくんだよね」
「アンタのせいで私達が悪者みたいになったじゃない」
結局自分はこうなるのだ。
地味な自分は怒りの的にされるのだと思ったときか「事実だろ」という言葉が背後から聞こえ振り返ると、そこにはウルフくんの姿があった。
ウルフくんは私の横に立つと、私が怒らない分、言い返せない分、その言葉を全て女子達にぶつけ、言い返す言葉がない二人は去っていった。
「私、ウルフくんに冷たくしたのに、なんでこんな地味な奴を助けてくれるの?」
「お前が自分を地味だって思うからあいつらもつけあがるんだ」
そう言われても、自分が地味なのは事実だからと言えば「そんなことねえだろ」と言われても伏せてしまっていた顔を上げる。
少なくてもバカにしてるあいつらよりお前のが何倍もいいと言われ、私の鼓動が音を立てる。
するとウルフくんは、自分も見た目で嫌な思いをしたことがあると話始めた。
綺麗な白銀の髪に纏うクールな雰囲気。
そんな見た目のウルフくんはどこにいても注目されたが、周りが見ているのは外見だけ。
そんな自分と私をどうやら重ねていたらしく、その話を聞いた私は、どんなに綺麗な人でも悩みがあるのだと知り、地味だからと納得し受け入れていた自分が嫌になる。
そして翌日。
教室がざわつくこととなった。
地味子と言われていた私は眼鏡をやめコンタクトにしたのだが、その素顔は地味などではなく可愛かった。
そんな私に「やっぱり地味じゃねえじゃん」というウルフくんの言葉に少し恥ずかしさを感じながらも、ありがとうと笑みを浮かべる。
《完》
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