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気づけば笑い合いながら話していた。
今まで私は変わり者という目でしか見られてこなかったというのに、初対面の相手とまさかこの様な話ができるなど思ってもみなかった。
噂では血も涙もない冷酷な人物だと聞いていたが、私にはとてもそんな人には思えない。
「もう夕刻か」
「あら、本当」
あっという間の楽しい時間。
いつぶりにこの様に楽しく人と会話しただろうか。
その日信長様は城に泊まり、翌日私は信長様を城下へと案内する。
「それでこちらが茶屋であちらが——」
私が町のお店を教えていると、突然信長様は笑い出す。
笑われるようなことはしていないつもりなのだが。
「すまぬな。あまりにもお前が嬉しそうに話すもので」
「す、すみません」
一人ではしゃいでしまっていた自分が恥ずかしくなり、私は少し顔を伏せる。
「いや、よい。愛らしいと思っただけだ」
その言葉に胸がきゅっと締め付けられた。
愛らしいなど、幼き頃に言われた以来だ。
小国の城下の案内は直ぐに終わり、そろそろ城へ戻ろうとしたときだった。
走ってきた童が信長様にぶつかったのだ。
勢いでお尻を地面についた童に、私は怪我をしてないか尋ねる。
その童の顔は今にも泣きそうで、恐怖を表していた。
その視線を追い、私も体が固まる。
信長様の冷たい瞳。
それは、殺気。
「信長様、お許しくださいませ。まだ幼い子のしたこと」
「ああ、わかっておる。童、これにこりたら気をつけろ」
童は泣きながら帰っていき、私と信長様は城へと向かう。
その帰り道、私は無言だった。
話に聞いた血も涙もない冷酷な人物。
それは、童さえも手にかけると言うことだったんだと思うと、信長様が怖くなる。
「あの童、あれで無闇に人中を走らぬようになるだろう」
そう漏らした言葉で気づいた。
先程のあれは、あの童のためにしたことなのだと。
本当はただ優しい人なのに、誤解されてしまう人なんだとわかったら、やはり噂なんてあてにならないと思えた。
変わり者だって構わない。
私は私に変わりない。
私達は変わり者だけど、だからこそ仲良くなれる。
そんな気がした茜空の帰り道。
─end─
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