最終章 回帰 

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 当初の台本では、美咲と共に現れた武井が、  別荘室内でくつろぐ岡島らを見つけて愕然とする。  そこへ中津までが現れ、  彼はそこで新たな真実を知らされるはずだった。 「その間に、室内にいる人たちはさっさと地下に隠れちゃう。でもまあ、爆発  しちゃうってところは一緒なんだけどね、それでもいきなりの変更だったか  ら、こっちも結構ドキドキだったのよ」    中津と美咲が共謀し、別荘を爆破させて全員を殺害してしまう。  そうしてまんまと......2人は大金をせしめることに成功するのだ。  ところが、武井のあまりに早い出現で、  急遽台本とは違う結末へ突き進むことになる。 「あなたがタクシーで追い掛けた谷川くんだけ、彼だけが何も知らなかったの  よ。だって大慌てだったから、つい連絡するの忘れちゃって、後からさんざ  ん彼に怒られちゃったわよ。でもあれね、なぜなのかしら、全部知っている  はずの岡島さん、あなた最後、涙まで見せて悔しがってたじゃない? 妙に  感情入りまくりだったけど、あれっていったい……どうしてだったのかし  ら? 」    中津はいったん言葉を止めて、武井を挟み、  優子と反対側に座る岡島へと顔を向けた。  しかし岡島はまるで反応せず、  口を真一文字に閉じたまま、  じっと前方の移りゆく景色を見つめている。 「とにかく、怪我の功名と言うか、結果オーライだわよね。ラストの大掛かり  なセットも使わずに済んだし、そのおかげでこんな日を迎えられるんだか  ら、ホント、ちょーラッキーだわ! 」    台本上最後の最後まで突き進んだ場合のラストシーンは、  今、リムジンの向かっている先、  ホテルのパーティー会場になるはずだった。  ところが今やその必要もなくなり、  だからといって、当日キャンセルなどできようはずもない。    さらに言うなら、リビングルームでの武井の行動次第では、  最終幕がスタートしてしまう可能性だって、まだあったのだ。
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