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「俺たちは“双堕児”だ。」
「そう?ん?」
「女腹から掻き出された、双子の未熟児だよ。せっかく馬鹿な家系を根絶やしにしてやろうと思っていたのに邪魔するな!」
そして次は弟の方が俺の首を掴もうとして手を止めた。
「やぁ、僕の契約者においたは頂けないよ?」
「なんでこいつがここに……?」
弟の口調を聞いて、兄もこちらを見て慌てて体に引っ込んだ。
それに合わせるように弟の方も水際の体に引っ込んでしまった。
「何だったんだ……今の。」
「ふ~ん、やっぱり彼らだったんだね。」
「あ?」
「双子を宿した家はいずれ衰退したり根絶やしになったりするって噂。」
「そんなの迷信だろ?」
「見えない人間からしたら、ただの運としか思わないだろうけど、彼らが関わっていたなら変わってくるよ。」
百目鬼は腕の目を動かした。
「そろそろ彼らの父親がお帰りのようだね。」
「帰ろう。」
家に戻ると、百目鬼はタブレットの電源をつけて掌をかざした。
「それどこにあったんだよ。」
「ちゃんと買ったんだよ。ほら、これが彼らの資料。」
百目鬼のタブレットには見たこともないサイトが開かれていて、画面から異様に黒煙が立っている。
「これ違法端末とかじゃねぇだろうな?」
「心配いらないよ。君名義だったものが解約されたの確認してから使っているから。」
「そう言うのを違法って言うんだよ。」
サイトを見ていくと、双堕児について細かく書き込まれていた。
「兄弟姉妹を争わせて遊ぶって……これじゃ人間がただの駒になるって事じゃねぇか。」
「人間の欲が集まるところに悪鬼あり。彼らは欲をため込む期間が長い悪鬼でね、胎児のときから人間に入って喰らうだけ喰らってガワでも遊んで、兄弟のどちらかが使い物にならなくなったら欲の塊になって、次の代の胎児の心の隙間に入り込む。その家系が滅亡するときにやっと悪鬼になるのさ。」
そんなに長い間家系事態に取り付いてるのか……ん?ってことは。
「ちょっと待てよ、それじゃ水際もその兄貴もどちらも死ぬって事かよ!」
「悪鬼になれば大概死ぬって事、話したじゃないか。」
「どうにか殺さない方法とかないのか?」
「おや、君のような人でなしが人助けかい?」
「見殺しは胸糞悪いだろ。」
百目鬼は考える素振りをするとうんとうなずいた。
「何かあるのか?」
「まさか!これらは死んでおしまいさ。」
「何の時間だったんだよ!」
「まぁ、彼の欲の正体は兄弟の確執なんだろうね。双堕児の影響だけでなく、兄弟というのはいつだって争いやすいからね。」
「確執……。」
俺は、次の一手をどう進めようかと思考を巡らせてあっという間に朝を迎えた。
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