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2-F 2人の“まこと”
“私立未完成(カンセイ)学園では社会教育の一環としてカースト制度を採用している。
制度の甲の最高位は学校長にあり教職員であり生徒である。乙は教職員であり生徒である。
カーストは日々更新し、それを参考しカーストを確立すること。“
これは俺の通う学園の校則として手帳に記載されている一文だ。
俺、浦霧真はその中でも2-Fの最高権力者としてクラスを掌握している。
権力者とは常に下層を踏みつけて権力を守り抜かなくてはならない。
今日も、校門をくぐるとすぐにある掲示板の前には人だかりができている。
俺はその人だかりに一声を上げる。
「おい!」
俺の声で人だかりはあっという間に飛びのいて道を作る。
掲示板に目を凝らすと俺のクラスの中の順位は変動ない。
よし、今日も安泰だ。
「浦霧さん、おはようございます。」
「浦霧さん、お荷物お持ち致します。」
俺の顔を見るなり、他のやつらは必死に俺に頭を下げ中には媚び諂うやつまでいる。。
それを一瞥して荷物を持たせクラスまで陣を成していく、なんて心地いいのだろう。
俺はクラスに着くなり、最奥の机と椅子を蹴飛ばした。
驚いて顔を上げる男、百目鬼誠はこのクラスの最下層のやつで俺のサンドバッグとして毎日懲りずに学校に来る。
もちろん顔を合わせればどうなるのかわかりきっていることだ。
「てめぇ、何見てんだよッ!!」
俺は百目鬼の胸倉をつかみ、床に叩きつける。動きが鈍い百目鬼に俺は罵声を浴びせながら何度も蹴りを入れる。
「毎日毎日俺の前に現れんなって言ってんだろ?俺が優しい言葉で教え導いてやってんのに。」
完全に動かなくなった百目鬼を見て、俺は席に着く。
その直後にクラスの連中が百目鬼に襲い掛かり気が済むまで蹴り続ける。
これが俺のカーストの確立方法だ。
まず最高権力者の俺がこいつを痛めつける事でこいつのカーストの価値が低いのだとクラスのやつらに分からせる。
こいつの戦闘不能を見計らってクラスの連中のストレス解消に使われれば、俺の立場にのし上がろうと思うやつらはいなくなり、俺の立場は完全なものになる。
俺より下のやつらの権力争いは見て見ぬふりで中立を装う。
俺の作戦は完璧だ。
この学園に入った理由もこのカースト制度に感銘を受けたからだ。
俺はここでトップに君臨しなくてはならない……、本能的なもので悟ったのだ。
始業のチャイムが鳴り、クラスのやつらは一斉に席に着く。
その数秒後に担任が顔を出す。
担任も、床に転がっている自分の生徒に目もくれない。
『クラスの最下層になったものは人であっても人でなし。』
其れがこの学園の在り方だ。
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