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大林少年
ヨウちゃん先生には謎が多い。まず本名が分からない。教員名簿に書かれた名前もヨウちゃん先生とあり他の教師と一線を画している。そういえばクラスメートの名前もヨウちゃん先生がつけた渾名の方しか思い出せない人もいる。
大林少年もその一人だ。彼は探偵小説の愛好家で自分を名探偵だと思い込んでいるところがある。彼にしてみればヨウちゃん先生は魅力的な謎を抱えた存在なのだろう。
「どうしてそんなにヨウちゃん先生を気にするの。好きなの?」
「違う。ヨウちゃん先生は重要な秘密を隠しているに違いない」
そんなのみんな知っている。触らぬ神に祟りなし。好奇心で危険な目に遭うなんて愚の骨頂。何の変哲もない日常よりも大切なものなんてない。
「エミリー、君こそヨウちゃん先生を気にしているじゃないか。そこに未知なるものを求める気持ちが完全にないと言えるのかい?」
大林少年は反論してきた。そりゃあそうだろうけどさ、立場柄はいそうですとも言えないし、さてエミリーはどうしたものですかね。
「そんな風に私の興味関心まで詮索して、探偵気取りか知らないけど、素直に好きな人には好きって伝えたらどうなの?」
「だから違うって」
「そういう態度されると女性はこの人私のこと好きなんだって思うし思わせぶりなら失礼なだけなの」
「ごめん」
意表を突かれた反応に大林少年は戸惑い謝った。何に対して謝っているのか分からなかった。自分は探偵がしたいのか恋愛がしたいのか後者なら対象は誰なのか。
なんだかよく分からないがエミリーと大林少年はヨウちゃん先生の情報を交換し合う関係が続いている。
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