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「終点~」
そのアナウンスに目を開ける。バスを降りると全く知らない駅で、もう明るくなっていた。どうしよう、と考えていると、
「お嬢ちゃん、ちょっと来てくれるかな?」
男の人の声。反射的に従う。男の人は、怖い。連れていかれたのは交番だった。あっ、と思い顔をあげると男の人は警察の服を着ていた。
「こんな時間にどうしたの?」
返事に困り視線をさまよわせると、お茶請け菓子と果物、果物ナイフ、そしてつけっぱなしのテレビが目に入った。ニュースキャスターは神妙な面持ちで、
「今日、東京都歌舞伎町付近のアパートで、風俗で働く二十八歳の女性の死体が発見されました。包丁が女性の近くに放置されており、それが凶器だとた思われます。傷口には荒らされた跡があり、警察は猟奇殺人と見ています。また、この女性には十三歳の娘がおりますが現在行方不明となっています。」そう言い、コメンテーターに話を振る。コメンテーターは
「てか、二十八歳で十三歳の娘ってすごいですよね。」
と少し笑った感じで言う。周りの人も少し笑ったように頷く。なんだか馬鹿にしているみたいだった。ニュースキャスターの後ろのスクリーンには昔のお母さんがほほ笑んでいる写真。
「お母さん…。お母さんに会いたい…。」
突然そう言い、泣き始めた私を警察の人がぎょっとした顔で見つめる。
「ど、どうしたの?」
それに構わず私は動いた。お母さんに会うには…。果物ナイフを手に取る。
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