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「は……医…を呼……!」
〔……頭が、痛くなくなっている?〕
瞼をゆっくりと開く。ぼんやりとピントが合わない目にぼんやりとした影が映る。
〔人?……あぁ、執務室か〕
「っぁ!起きたか良かった……おい、医者はまだ来ないのか!?」
目の前の人……キィルは自分の膝に頭を乗せている自らの主人を、数少ない友人にしか見せない慈しむように聖母のような笑みで見つめた後、近くに来ていた自分の部下に怒鳴る。
「こ、こは?」
つい先程までは美しいテノールだった声は掠れ、とても弱々しい。
「記憶が混乱している……?倒れた時頭でも打ったか。」
キィルは主人のおかしな言動に理由付けた後、告げた。
「此処は、リュードレン国のフェルスト公爵直轄魔獣討伐部署全部隊統括隊長執務室。つまり君の仕事部屋だ。」
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