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俺の目覚め
俺の目の前には頭を下げる一人の大人。年齢が俺より年上な奴が、必至に言葉を選び、謝罪をしてくる。
「っ、今回の幻獣討伐の件、誠に、申し訳ございませんでした。」
あぁ、俺の部下か。.....それで謝っているつもりか?馬鹿馬鹿しい。
「.....お前が謝るべき者はなんだ。上官か違うだろ民だ。だがもうその民はいない。お前のせいでな?それにどうせこれも上層部にもみ消される話だ。本当に良くやるよ。そうだなぁ、例えばこういう風に。.....おい、お前は何か勘違いしているようだ。『そんな事件、なにもなかったぞ?』とな。さっさと始末書を書いて業務に戻れ。」
部下とは面倒くさいものだ。人間を操るとは難しいからな。これもまた、俺の責任か。
ああ、下手に出世するものではないな。
ん?そんなことを考えている間に秘書と交代か。こんな立場なのに秘書とは。俺も偉くなったものだ。
俺はガタガタと椅子を鳴らし立つと扉に向かって歩き出した。と、部屋の中央あたり、特になにも置かれてない場所で、
「うおっ!?」
転びそうになる。.....少し視界がふらつくな。過労か?まあいつものこと、
ガタッ
「つっ...今のは少し、っあ!?」
突然の頭への鋭い痛みに、膝をつく。
『あれ、僕は誰?』
『ここは何処?誰だ?お前は...誰だ?』
そんな言葉が頭の中を飛び回る。
「っあ、ぐっ」
んん?は?...ここはどこ?いや、ここは、俺の、執務室。
「うぁ、あぁ」
なんでわかるの?ここは俺の職場、職場?
あまりの頭痛に頭を抑える。
僕はまだ16なのに?あ、ああ?俺は?もう成人して、る?
「っぐ うぁ、あぁ」
いや、僕?私?俺は?リュードレン国の公爵家の?いや、僕は日本の平民?
違う。違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う。
全てが、違う。
僕は、誰だ?
いや 僕は ここ、を 知って、 る?
「っああああああああああああああ」
「シェイキル様、どうかなされ、!?シェイキルさ、シェイ!?おいどうした!!シェイ!!おい!」
最後に記憶しているのは秘書、いや俺の友人の声。
そして俺の体を倒すまいとする友人の俺を支える感触だった。
頭痛は、自然と、消えていた。
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