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救われた後に
私が抱いたあの時の感情は何だったのだろうか……。
悪鬼に取り憑かれていたのだろうか。
分からない……。
包丁を持ち出し、先輩を殺めようとした自分が!
けど、救われた。
智也に……。
最近は、高校の行き帰りで、智也と良く話すようになった。
優しくて、明るい人……。
そして、誰よりも私の事を大切にしてくれる人。
智也のイメージは、私の中で大きな変化を遂げた。
ただ、過去を完全に断ち切れた訳ではない。今でも、下駄箱に靴を入れる時、僅かな緊張感を感じ、右手が微妙に震えてしまう時があるから。
嫌な空気感だよね。
それと、沙耶香にも勇気を出して、先輩と付き合っているのか聞いてみた。何時までもモヤモヤした気持ちを抱いたままで、沙耶香と過ごしている訳にもいかないから。
「近くにいたの!」
かなり驚いた表情を見せたが、
「祐奈じゃ、何時になっても行動を起こさないだろうから、私が結賀先輩に、祐奈と付き合うよう、直接、お願いをしていたんだよね。そうしたら、祐奈から手紙を貰ったけど、付き合っている娘がいるから、御断りの返事をしたって言ったからさ。驚いちゃったよ。やれば出来るじゃん。このー!」
沙耶香は笑いながら、私の背中を力任せに叩く。
「そう言えば、祐奈~。この前、他のクラスの男子生徒と、一緒にお帰りだったよね~。しかもデートしているみたいな雰囲気でさ~」
沙耶香がニコニコしながら、問いかけてきた。
「幼馴染だよ。小学校の頃からずっと一緒だから、仲良くしているよ」
さり気無く答えておく。
「何が幼馴染だ~。私は幸せですって顔だったよ。ほら、ツンとしてないで笑え!」
沙耶香は両手で私の頬を引っ張る。
「痛いよ!沙耶香!止めてよ!もう~」
暗い表情でうつむいている時間より、笑顔で過ごす時間が多くなった。
沙耶香。
ありがとう。
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