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私の名前は果穂美 祐奈(かほみ ゆうな)。特に何かに秀でている物もなければ、特に成績が優秀と言うわけではない。中学時代にテニス部に入ってはいたけど、義務的にやっていたようなもので、常にレギュラーに選ばれていた訳ではない。気がついたら、後輩に負けてしまうようなレベルだったから。全てにおいて並より少し下と言ったところだろうか。
智也からは、『最近、可愛くなったよな』と言われたけど、そんな事を言ってくれるのは、智也だけだから、当てにはならない。
入学前の説明会で貰った資料に従って、下駄箱で靴を履き替えて、校舎の中へ入り、指定された教室へと向かう。
教室の中は活気に満ち溢れている。これから始まる高校生活に、期待を膨らませている生徒達で一杯だ。
私は場違いな自分の存在を感じつつ、俯き、沈んだような表情を浮かべて、隣と前後の生徒に軽く頭を下げて指定された席に着く。
やがて、担任の先生が教室に入ってきて、簡単な説明を行い、入学式の会場へと皆で移動する。厳かな雰囲気の中、他の生徒達の瞳には、輝きのような物を感じ取れたが、特に感動とかそんなものは感じなかった。
何故なら、特に大きな期待も無く、義務的な感じで機械的に高校へと進学をしてしまったから……。
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