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大好きなおばあちゃんに
大好きなおばあちゃんは、あたしが結婚することを誰よりも願っていた人だった。あたしが三十を過ぎた頃に、頻繁に見合い話をするようにもなっていたっけ・・・・
「ばあちゃんねぇ、凛々子の選んだ人をこの目で見ねば死ぬに死にきれねぇって」
三十半ばになっても異性を紹介しないあたしを心配してくれたおばあちゃん。もしかしてなんて疑いの目を向けられてたことも知っている。けどね、おばあちゃんが思っているほど、いい子じゃないの。
『凛々子・・・落ち着いて聞きなさい』
母からかかってきた電話を聞いたのは深夜すぎ。ネット配信の準備や溜め撮りなどで気にしていなかった。母の切羽詰まった声でなんとなく予感していたけれど、やっぱりそうだった。
あたしは運動不足の身体で深夜の道をひたすら走った。チャリを全力疾走して二十分ほどかかる県立病院の駐輪場に停める。
〇
もうすぐ百歳だとはしゃいでいたおばあちゃんは、病院のベットにいる。酸素マスクをつけられて、規則的なリズムを刻んでいる部屋は空気が重い。
「凛々子や・・・来てくれたねぇ。生配信はどうしたのぉ?」
おばあちゃんは家族で唯一動画配信に賛同してくれた一人。誰もが反対する中、おばあちゃんだけ賛成してくれた。今は熱狂的なファンに交じってコメントやスーパーチャットをしてくれる。ありがとうも言ってないのに、おばあちゃんと計画していた動画だってあったのに・・・・
「おばあちゃん、まだ逝っちゃだめだよ!!あと半月すれば、百歳じゃん。一緒に動画撮影するって約束・・・」
おばあちゃんの瞼がゆっくりと閉じられていく。あぁ、なんでなんで?人生を楽しもうとしていたのに、これからたくさん学ぶんだって言ってたのに――――
「おばあちゃん・・・おばあちゃん・・・っつ」
山本タエ(99)永眠。
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