プロローグ

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プロローグ

「それでは、ユニバースさん」 リハーサルが始まった。 手が凍っているように冷たくて、喉が苦しいって叫んでる。 1歩1歩ステージに上がる足が重く感じる。 目の前には審査員と2次審査に通ったユニット達が椅子に座って演奏を観覧している。 「それでは、どうぞ。」 合図が出て、ドラムのカンカンカンという駆け出しがあって。 それに合わせてみんな演奏を始める。 ギターの心地よい暴走感。ベースの滑らかな低い低音。キーボードの流れるメロディー。ドラムの楽しい弾み。今日の為に沢山練習してきて、緊張の裏には楽しいという想いがある。それを裏切るなんて、今日までずっと思っていなかった。 「ぁ……ぁす、すは。」 マイクに添えている手が震えて、声も同じように怯えている。 審査員と観客であるバンドマン達は目を見開いていた 演奏がピタッと止ってもオレは必死に声を出そうと歌い続けた。 「……っ。」 「どうした。」 「理人?」 ダッとその場から逃げるように、ステージから降りた。 どうしたんだろう。あんなに歌うことが好きだったのに。
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