魔法少女?プリンセス★ルミカ

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 立ち込める硝煙の前で、少女は不敵に微笑んだ。  眼前にそびえるのは高層ビルに届くほどの巨大な、タコに良く似た怪獣だ。周囲の建物をじゅじゅうと溶かしながらゆっくりと侵攻する彼から、人々は散り散りと逃げ惑う。  その間を縫うようにして最前に躍り出た。 「そこまでよ!」  ヒールを鳴らした彼女に、誰もがはっと目を見開く。  それは、ピンク色の衣装を身に纏った金髪碧眼の少女だった。つんと尖った顎を油断なく引き、大きな目で、目の前の怪獣を睨み付ける。  少女が二の句を告げる前に、怪獣がぬるりとした触手を伸ばしてきた。本体と違い、こちらは随分と素早い。 「お話が通じる子じゃないみたいね」 「ルミカ! さっさといてこましてやるタマ〜!」  触手の猛攻を踊るようによける少女に、彼女の肩に乗ったウサギのような奇妙な生き物が声をあげた。容姿と声は可愛いらしいが、その発言には可愛さの『か』の字もない。  肩に乗せた物騒なマスコットにウインクで返すと、少女はぎちりと拳を握る。ぎゅっではない、確かにぎちりという音がした。  次の瞬間、あたりに轟音が響いた。  少女に殴り飛ばされた怪物は上空で爆発四散。酸の雨となって周囲を悉く溶かしていく。当然野次馬たちは阿鼻叫喚となってのたうち回った。 「ふう、一件落着ね」  悲鳴の渦中にありながら、酸の雨を手の甲で拭い、達成感に溢れた笑顔を見せる彼女の衣装や肌には火傷1つない。その肉体や精神は、人類とは根本的に違う造りをしているのかもしれない。  彼女はプリンセス★ルミカ。  突如として怪獣災害に見舞われた東京を救うため、彗星のごとく現れた魔法少女である。
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