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…
スパーン!
ハリセンのごとく音が鳴り響く。
「この馬鹿者!」
「あいった…たたぁ〜」
こちら
獣人及びその他危険生物取締対策本部、
人呼んで獣隊。
「お前は、また!また!やってくれたな!」
こちら、対策本部長リーブス。
頭をはたかれ、周りが苦笑いをする中頭を下げた。
「すみません、すみまへッ!いたぁあ!
舌噛んら…ははッ」
スパーン!
「あいったあぁ!」
「お、ま、え、な。ははッ…じゃねえんだよははッ、じゃ。お前はいったい何匹目取り逃したんだッて聞いとんじゃボケェ!頭ハゲ散らかしとんのかおんどれ!」
「いや髪の毛は関係ないかと…」
「やかぁしい!ええか?ここ数日で急速に奴らが勢力を拡大しとるっちゅうことは
何遍も何遍も言うたやん、なぁ、なあ!」
「はい、それはもう十分…」
「せ、や、か、ら!うちらみぃんな厳戒態勢とってこっから一人も犠牲者だしまへんいうて市民の皆さんに御約束したやろがい、ええ?何のための対策本部や?何が!
それで何が獣隊や?自分やる気あんのか?」
「すみません!」
「っはぁ〜ほんまに頼むわ新人隊員さんよぉ!自分、歳いくつ?」
「はい、22です!」
「はぁ〜…。その年でその間抜けか。
まぁええわ、今回の標的がA型で攻撃的な性格じゃなかったのが幸いや。怪我が無かったか後でちゃんと医務室行き。」
「はい、サー!」
…てなわけで、割とこっ酷く叱られました
「なぁに?あんた、また叱れたの」
こちらルームメイト。
リュウと呼ぶ。お洒落に気をつかう屈強な兵士である。
「そうだよ!全く、あのリーブスって奴敵わないよ…ヒゲだけは立派だけどな」
カレーは金曜日、海軍でもないのにそう決めてあった。
ここは隊員の寮にある食堂。
しかし最近は雨、雷、洪水、土砂崩れに暴風、豪雨、積雪から高波まであらゆる災害が曜日ごとに代わる代わる起こっている。
「そんなことよりアメトラ、あんた帰ってからちょっと臭うわよ」
「え?そう?ちゃんと風呂に入ったんだけど」
くんくんと腕のあたりの臭いを確認する。
「嫌だ、あの取り逃したっていう獣人の臭いじゃないの?やめてよぉ汚いわね」
「なぁその話、もうやめない?」
「いいけど、臭いはよくないわ。キツイ香水でも付けときなさいよ。路傍の排水溝とご飯食べてる気分」
「はいはい、わかったわかった!」
実際、臭いはすれ違いざまに分かるくらいには染み付いていたようだった。
通りすがりの寮生が顔をしかめて俺を見てくる。
「うーん、自分じゃわからないけど」
「それはあんたの鼻がバカなだけよ。
あたしにはうつさないでよね。もういっぺん風呂にでも浸かったら?」
「はいはい」
獣人、というのは一体何者だろう。
話したことはあるが、まともなコミュニケーションは取らないしむしろ取ってはならないことになっている。
触れるのは任務のときだけ、獣人は総じて非国民とされるいわばこの国の害虫、寄生虫である。
何が彼らをそんな存在に貶めているか?
それは俺もよくは知らなかった。
座学で教わることからすると、彼らはただ危険なのだ。
いつ襲ってくるかわからない
人間との見分けはつきにくい
主に夜行性
主食は人の血や肉や骨や皮膚や内臓、
つまり人体の殆ど
接触後に残る独特の臭い
人の体温よりも平均3度前後高い
「今の研究でわかっているのはこれだけ、か」
念入りに頭を洗い、触れた手は手袋をしていたもののやはり臭いがついたようだった。
そこも念入りに洗う。
「…ん?」
手のひらが少し腫れている。
「痛いな…」
やはり医務室には行かなければ。
浴槽に浸かっていると、リュウが様子を見にきた。
「あら、手が赤いじゃない」
「痛いんだ。今日の奴に触れたからかも」
「嫌だぁ、怖いこと言わないでよ!
って…あんた何考えてんの?あ、あたしに見られて興奮したわけ?いやらしい」
「はぁ?」
「いいわよ、相手してあげても!
でも臭い男は嫌だからね」
「誰が猛々しい雄とするか!」
「何よぉ、あたしこれでもあんた以外の殿方からはモテるんだけど?あんたは一人で抜いてなさいよ。アデュ」
扉は閉められ、訳もわからずそのまま湯船に浸かっていた
「…あぁ?」
何か湯に揺られる感覚がして見ると、
確かに自分の股間につくソレも腫れて膨らんでいたのだった。
「コレのことか…!でも何故、」
リュウの言う通り、リュウに見られて興奮したということは断じてないが
それなら何に反応したのだろう
放っておけば萎えるだろうと思っていたが
その夜が明けても腫れは治らなかった。
…
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