今日はxx日和

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逃げ出してしまった… 「リュウ!」 「なぁに〜?私今からお出かけなんだけど」 「こんな時間に?もう消灯時間だぞ」 「外に出るわけじゃないわ、お泊まりデートよ」 「お、お泊り…?まさか、他の部屋でまた遊ぶ気か!駄目だよ、そういうことは規則違反だから!」 「そういうことってなぁに?言ってご覧なさいよ」 「い、いや…だから」 「そんなお子様みたいな頭だからいつまでも童貞なのよ、自覚しなさい?じゃあね、アメトラちゃん」 「う…」 結局、あれから何も変わっていない けど、誰かの手が恋しかった リュウはいないし、そもそもリュウとはそんな関係になろうと思えない だからといって、一人ですれば良いというものではない そもそも自分の体に触ることもできない 獣人がくるんじゃないかと恐れて 「…右よし、左よし…」 何日も悩んだ結果、リュウがいなくなる夜の日 俺は寮を抜け出した 俺の体を常に興奮状態にしたのは、 恐らくあの獣人である ならば、それを治すのもあの獣人だ 《何を言ってるんだい、アメトラ君! そんな危険な事はさせられないよ。 そもそも、奴らと接触が許されるのは調査か駆除の時だけだ!》 たった一人の理解者、グランドさんから止められたということは誰からも賛同は得られないだろう ならば、自分一人で実行するしかない 頭の中に流れる雨の音 疼く体 腫れた手 元に戻してくれ、お願いだ 「はぁ、はぁ…」 寮を抜け出すのは簡単ではなかった でも、計画を練って人に見つからないルートを探っていたおかげか誰にも見つからなかった もし見つかればその時は、除隊だろう その日は曇りだった 月の光もなく風もない 例の路地裏へやってきた あの、若い獣人に会った場所だ 確か、あの後ここで一人の女性が襲われたと聞いた つまり、ここは獣人が集う縄張りの一角 ここで人間狩りが行われている まずは、獣人がここを通らないことには意味がない この辺りに獣人はいるだろうか 目を閉じ、耳を澄ませる 《目標が接近中、厳戒態勢に入れ》 頭の中の声が言う この声はいつも正しい ならば、ここで奴が来るのを待とう あの時と同じ奴かどうかはわからない あの獣人は、頭に猫耳カチューシャをしたように耳を生やしていた 顔はよく思い出せないが、殺気が俺を驚かせた 何が俺を怖がらせたのかわからないが 風が吹いた 「…」 ポツ、ポツ 雨粒がアスファルトの地面を濡らし始めた ザー…ザ、ザー… ノイズが聞こえてくる 視界が歪む 「はぁっ、はぁ…」 何かの呼吸が聞こえる それに合わせるように、俺の鼓動も速くなる 《直ちに任務を中断せよ》 わかってる…でも、逃げられない 霧の中から影が現れた あれだ… 獣人が触れた手が熱くなる 息が浅くなる 《失敗したら、死ぬかもしれないんだよ》 でも不思議とそれが怖くなかった 「…かかって来い」 腰には銃を持ってきていた だから、気が強くなっているのかもしれない 「…誰だ」 影の方から声がした 俺に話しかけているのか 「俺は、人間…だ」 蜂蜜の匂いがする 甘い香り 引き寄せられそうになりながら 影が近づいてくるのを見つめた 「ふん…逃げないのか」 この前聞いた、少年の声ではない 大人の声だった 「お前達に、会いにきた!」 雨が強くなってきた 髪が濡れる 「なるほど?俺を殺しにきたか」 男の声が不敵に笑う 人影に、耳が生えている 顔が見える …獣の顔ではない まるで人間そのもの かなりの美形だ この前の少年の顔もこうだったか… 「違う、お前達に助けて欲しい」 はははは、と男が笑う 「何?助ける?俺が、人間を?」 男は近づいてくる 俺も銃の場所を確かめる 「そうだ」 男は金色に目を光らせた その光に気を取られ、突然飛びかかってくる獣に気がつかなかった 「ぐっ…!」 目を開けると、地面に叩きつけられていた 首を絞められ、獣の爪が食い込む 「か、はっ」 雨が天井から降り注ぐ 獣の目は赤く光って、俺を今にも食い殺しそうなほどの勢いで捲し立てた 「ふざけるなよ、人間の小僧が。 今まで俺達の家族を危険な目に合わせておいて…困ったら都合良く利用しようとするのか?おい、聞いてるか小僧」 男は獣のように鋭い目で俺を睨んだ 俺は怯んだ 銃を取ろうとして手が震えた 確かにそうだ 今までずっと殺そうとしていた相手に助けを求めるなんておかしな話だ 「…かっ、た、」 「ああ?」 獣人は首を絞める手を緩めた 久しぶりに、息が吸えることに感謝した 「知ら、なかった、獣人がそんな風に言葉を話すなんて…」  今まで、獣人を憎んできた まるで俺の家族に銃を向けた他国の軍人を恨むように 敵だと思って疑わなかった 「知らなかった…こんなに綺麗で美しくて、情がある、…人間と同じだと」 男は嘲笑した 「人間と同じ?馬鹿にするな 俺達はもっと気高くて美しい お前らとは比べ物にならない」 気高い、か… 自然の食物連鎖の中に人間が組み込まれ、 獣が人間よりも強いのならば 人間がより強い獣に食われるのは当然 魚をとって食うことを倫理に反するという人間がいないように、獣人の中に人を食うことを疑問視するものはいないようだ 確かに、この男に限れば美しさは人間に勝る 「…そうかもな」 そういうと、獣耳の男は俺を睨んだ 「お前達は何がしたい、目的を言え」 俺は歯を食いしばり銃から手を離した 「俺は今日、隊員としてじゃなく 一人で来た。監視役はいない。 俺の体を治して欲しくてここに来た」 体液を出せば獣人が寄ってくる しかし、出さなければ体は満足しない 治す方法が一つしかないなら、 どちらにしろ獣人に会うことは避けられない だから来た、そして知りたかった 男は俺の手を取りあげ見つめた 「…あの時の狩人か」 男の目が変わった 「俺を知ってるのか?」 「ああ、お前に触ったのは俺の弟だ …なるほど、あのヘタレ軍人だ」 男はおかしそうに笑った 「良いだろう、お前を助けてやる 体が疼くんだろ? 触れたくて堪らないんだろ」 男は長い牙を見せる 「それは獣と交尾をしないと治らない症状だ。残念だが」 「こ…交尾って、俺はどうすれば…!」 「さあな?弟がお前にマーキングしたんだ。 俺に責任はない。もしどうしてもというなら、俺が相手をしてやろうか?」 「相手…」 男は俺の胸ぐらを掴んだ 「交尾するんだよ、俺と。 俺はお前にそんな義理もないから、もちろん報酬ありきの話だ」 「報酬ってつまり、俺を食い殺す!? 嫌ですごめんなさいなんでもしますから!」 半泣きになると、男はため息をついた 「馬鹿か?その取引ならお前が交尾する利益がないだろうが。血だ、血をくれれば殺しはしない。俺は人間の肉が嫌いだからな」 「交尾…ってどうするんだ」 「そんなことも知らないのか? まあいい、病気を治したいんだろう」 男は俺の服を掴んで建物の影に連れ込んだ ここは、この男の弟だという獣人を待ち伏せした場所だ 「叫ぶなよ、お仲間に見つかる」 「ふ…、んっ、ふ…///」 獣の舌は熱い 俺の息を奪うように口の中を侵食する 「ジンも目がいいな」 「ジン…?」 弟の名前だ、と男が言う 【先生】 ジン、という奴は なぜ俺が先生だと思ったんだ… 「同じ人間といっても餌になるかどうかは 質によるからな。 お前はまるで餌になるために生まれてきたような味だ。 お前なら肉も美味いかもしれない」 それは良い知らせだ… 男は、歯を首筋に立てた 「あ、…待っ、待て」 「何だよ」 「間違っても飲み干すなよ!」 「…どうかな」 「は、ああ"っ…!」 ああ、痛い… 牙が刺さっている 深く、肉を裂くように でももっと、もっとこの痛みを感じたい 「ふ、んん…ぁあっ」 ごく、ごく、と喉のなる音がする 「あっ、はぁ…」 「痛くないのか?」 「痛い…けど、気持ちいい…」
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