建設現場

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建設現場

 市川は建設中のビルの中に立っていた。月明かりが剥き出しの地面や鉄柱を照らし出している。   どこだ、ここは? オレは一体……  混乱しつつも記憶を手繰る。確か自分は求道会の経理部長に取材をして、事務所でもある自宅へ帰る途中だった。   そうだ、笈田から電話があって。  だが、電話に出たのは別の人物で、それからの記憶が無い。  市川が自分がどこにいるのか確かめようと周りを見回した。すると物陰から一人の男が姿を現した。 「どうやら正気に戻ったようだな?」  月光が男の顔に当たった。市川はその男を知っていた。 「()(えき)(かい)?」  求道会副会長の長男であり、笈田が異能を持つと言っていた人物の一人だ。 「さすが、私のことも調べているのか」 「何で……」 「自分がここにいるのか? それとも、私がここにいるのか? いや、両方か」  海は小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。 「笈田さんはどうした?」  悔しいのでわざと質問を変えた。 「安心しろ、我々に快く協力してくれることになった」  つまり笈田を洗脳したということだ、異能を使ったのだろう。 「オレも洗脳するのか?」  口の中がカラカラに乾く。 「いや、目障りな害獣は駆除する」  市川は逃げようとしたが、金縛りにあったかのように身体が動かない。   やめろ!  叫ぼうとしたが声も出ない。  眼の前に海が迫った。
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